〜深い河

ずっと前に読んだ事があったが、インド旅行中に再読。
インドの聖地「ベナレス(ヴァーラーナスィ)」の名を知ったのはこの本だった。
様々な人間のエピソードが出てくるが、なんと言っても大津の生き様が印象深い。
キリスト教の家庭に育ちながら、あまりに論理的な西洋の基督教に疑問を持ち続け、神学校に行くが教会から異端的だと言われ、終にはヒンドゥー教のアシュラムに拾われて死体運びをする大津。
大津の考え”神は存在というより、愛の働く塊のようなもの”は以前から私の感覚と似ていると思っていたけれども(私は教徒じゃないけれど小さい頃すこし教会学校に通っていて、イエス様の愛の教えは素晴らしいが神様の存在についてはどうしても分からなかった)、彼が何故ガンジス川−全てを受け入れる深い河に行き着いたのかが、今では何となく分かる。
さて、作品中でガイドの江波が一行を連れて行くナクサール・バガヴァティ寺に、連れのS氏がどうしても行きたいという事で、ベナレスのシルク屋やカフェ店員や欧米人バックパッカーに尋ねたのだが、誰も知らなかった(ガイドブックにも載っていない)。
ネットで調べてみると、何と架空の寺院という事が分かったのだ。
「深い河」の中で美津子がフランス旅行にて”テレーズを闇の森のなかに運ぶ小説中の汽車がモウリヤックの創作だと知った(テレーズ・デスケルウ (講談社文芸文庫))”ように、我々も、ナクサール・バガヴァティ寺が遠藤周作の創作だと知ったのだった。
小説中でナクサール・バガヴァティ寺に存在するチャームンダー像は、デリーの国立博物館で展示されている事を知り、デリーで見に行った。

深い河 (講談社文庫)

深い河 (講談社文庫)