〜箱男

安部公房の『箱男』を読んだ。

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男が、箱の中で、箱男について書いた小説。

一切の帰属を捨て去り存在証明を放棄した箱男は、ダンボール箱の形で都市に身を置く。

世の中との繋がりは、目の役割となる、艶消しビニールを垂らした覗き窓。そして、耳となる側面の穴(釘であけたもの)のみである。

箱男である語り手は、箱男の暮らしやエピソードについて語ってくれるのだが、物語が進むにつれ「書いているぼくと書かれているぼく」、「箱男と贋箱男」、「見ている 見られている」、「夢 現実 空想」がごちゃごちゃになってきて、語り手の箱男が一体どうなってしまったのか訳が分からなくなってくる。

訳の分からないままラストまで一直線だけれども、読後は何だか、箱男の悲しさが心に残る。

そういえば『カンガルー・ノート』の主人公も箱で死んだのだった。

安部公房にとっての「箱」って、何なのだろう。この小説は今度ゆっくり再読してみたい。

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)