〜半島を出よ
村上龍『半島を出よ』の感想。
上巻はなかなか読み進まなかったけれども、下巻になって話が急展開すると、没頭して一気に読んだ。
クライマックスである、phase two 11「美しい時間」は、全部読み終えたあともう一度読んでしまったくらい、気に入った。
「文学」としての評価はどうして良いのかよく分からないけれども、面白かったから良し。
まあ何と言うか、文学という枠を越えていて、もっと大きな意味でメディアというかジャーナリズムの一種というか、そういった小説だと思う。
さて、『半島を出よ』は主人公の居ない3人称語りなのだけれども、北朝鮮の特殊部隊メンバー・政治家・官僚・地方公務員・一般人、全ての人の視点において妥協なく、物語が書かれている。
北朝鮮特殊部隊の隊員にも様々なエピソードがあって面白いし、日本の政治家の駄目っぷりは、目に浮かぶほどリアルだ。
北朝鮮特殊部隊のメンバーや政治家、官僚の描写がリアルなのに対し、イシハラグループの少年たちは村上龍ならではという感じで、この小説の中で一際光っている。
毒ガエルやムカデを飼うシノハラ、ブーメランのタテノ、元ゲリラで武器集めが趣味のタケイ、テロにあこがれるカネシロ、悪魔教の5人、ヒノ、タケグチなど、世界とどう関わってよいのか分からない人たちの生き方、死に方には、とても切ない。
それにしても、村上龍は世界のことを色々勉強していて、本当にえらいと思う。
ジャーナリストの視点で政治や経済、社会について勉強し、小説家として物語を作る。
下らんエッセイとかハローワークとか書いていないで、こういう、現実をえぐった"問題作"をもっと書いてほしいな。
- 作者: 村上龍
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