〜石田衣良

石田衣良の『娼年』を読んだ。
題名からわかるように、少年が娼夫をする話。
主人公のリョウ君は二十歳で、大学生だけど大学に行かず、モテるのに女の子に興味が無く、アンニュイな少年なのだが、娼夫の仕事を始めてから次第に女性の欲望の多様さに魅せられ、没頭していく。
ある意味で男の子の成長物語でもあり、また同時に堕落物語でもある。
しかし、少年の内面の変化にスポットを当てているわりには、心理描写が薄っぺらい気がした。
幼い頃母親を亡くしたという過去と、年上の女性の内に潜む欲望を満たすことに喜びを感じる現在。繋がっているようで良く分からない。
変な性癖を持つ中年女性や初老の女性のお客さんにまで可愛さを感じるのに、同級生の普通の若い女の子を(彼自身も「普通」なのに)拒絶してしまうというのも、いまいちちゃんと書けていない。
まあしかし、それ程深読みするような本ではなく、俗っぽい小説です。
5点中2点かな。

娼年 (集英社文庫)

娼年 (集英社文庫)