〜角田光代

角田光代の『夜かかる虹』を読んだ。文庫版には表題作と『草の巣』の2編が収められている。
私は『夜かかる虹』の方を、とても気に入った。
私には姉妹が居ないし、似たような経験をした事は全くないのだけれども、本当によく分かる。ああわたしだ、と思った。
姉フキコと妹リカコという、全く性格の違う姉妹が出てくるのだけれども、わたしはどちらか一方に似ている訳ではなく、両方なのだと思う。すごいなあ、角田さん。

『草の巣』は、ある女の子が知らない男の車に乗り、そのまま何日も乗り続けてしまうという、赤坂真理の『ヴァイブレーター』に似た設定なのだけれども、知らないおじさんの車に乗っちゃう気持ちがわたしにはいま一つ分からなかった。
さいころの家庭と隣の薄汚い男に、何らかの共通点というか懐かしさがあるみたいだが、それは主人公の女の子にもよく分かっていないようだ。
男が草むらに家具やガラクタを並べて、壁や屋根のない家を作るというのが印象的。
壁がなくてもモノと人で家は成り立つと主人公は言うけれども、何故そう思ったのだろうか。
―またもや「壁」ですね。

夜かかる虹 (講談社文庫)

夜かかる虹 (講談社文庫)